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柳宗悦の思想
柳宗悦は、北秋田郡阿仁という地域で作られる「岩七厘」について述べています。これは軟らかい石を焼き、漆喰を施したもので、美しい形状を持つ七厘です。その名称は、炭代が七厘で済むことに由来すると言われています。秋田県の郷土料理「しょっつる」を作る際に岩七厘が使われることを誇りとし、また、鍋には帆立貝が好まれるとしています。
さらに、柳宗悦は羽後の国(秋田県南部)の唯一の焼き物の窯場である檜岡についても言及しています。ここでは親子で一基の窯を運営し、海鼠釉を用いた壺、甕、鉢、片口などの雑器を制作しています。生産量は少なく簡素な作りではあるものの、選び抜けば名品と呼べるようなものも見つかると評価しています。
柳宗悦の思想
柳宗悦のこの文章は、彼の民藝(民衆的工芸)思想と深く関係しています。彼は、美術品としてではなく、日常生活の中で使われる工芸品の美を重視しました。この考え方は、阿仁の岩七厘や檜岡の焼き物にも反映されています。1. 実用性と美の融合
柳宗悦は、実用的なものの中にこそ真の美が宿ると考えました。岩七厘は日常の調理器具でありながら、その形や作りに美しさが認められています。また、檜岡の焼き物も雑器として作られながら、時に名器と呼ばれるような品が生まれるという点で、柳の美の基準に適っています。
2. 地域性と手仕事の価値
柳は、各地の風土に根ざした工芸品を高く評価しました。岩七厘が秋田の郷土料理「しょっつる」と結びついている点は、柳の「地域性を持つ工芸が生活文化を豊かにする」という考えと一致します。檜岡の焼き物も、北国特有の海鼠釉を使用し、その土地ならではの美意識を反映しています。
3. 職人の手仕事と無名性
柳宗悦の民藝運動は「無名の職人が作る日用品にこそ真の美がある」とする思想を持っていました。阿仁の七厘も、檜岡の焼き物も、大量生産されるわけではなく、職人が日々の暮らしのために作るものです。このような手仕事の価値を見出す柳の姿勢が、文章の随所に表れています。
現代における意義と解釈
柳宗悦の記述は、現代社会においても多くの示唆を与えてくれます。1. 手仕事の価値の再評価
現代では、大量生産の工業製品が主流ですが、柳の民藝思想が示すように、手作業による工芸品の価値が再評価されています。特に「クラフトブーム」や「スローデザイン」などの潮流は、柳の思想と通じるものがあります。
2. 地域文化と食の結びつき
柳が指摘するように、道具と食文化には深い関係があります。秋田の「しょっつる」に岩七厘が使われるように、特定の料理に適した道具があり、それが地域の文化を形作っています。これは、現代における「郷土料理ブーム」や「地産地消」の考え方とも通じるものがあります。
3. 持続可能な暮らしと民藝
柳が評価した工芸品は、持続可能な素材や製法を用いています。現代社会では、環境問題が深刻化する中で、伝統工芸のような長く使える道具への関心が高まっています。柳の思想は、エコロジーやサステナブルなライフスタイルを考える上でも重要な視点を提供します。
まとめ
柳宗悦の文章は、北秋田郡阿仁の岩七厘と羽後の檜岡の焼き物を通じて、地域に根ざした手仕事の美を伝えています。これは彼の民藝思想と深く結びついており、実用性・地域性・無名の職人による手仕事の価値が強調されています。現代においても、手仕事の再評価や地域文化の重要性が見直されており、柳の視点は決して過去のものではありません。大量生産・大量消費の社会から脱却し、持続可能な暮らしを考える上で、柳の思想と彼が評価した工芸品は多くの示唆を与えてくれるでしょう。